2025.4.7


岡本 博教授が令和7年度科学技術分野の
文部科学大臣表彰を受賞されました



科学技術分野の文部科学大臣表彰は、文部科学省が、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的の賞です。このたび、令和7年度文部科学大臣表彰を、本研究室の岡本 博教授が受賞されました。受賞の対象となりました研究内容は、「テラヘルツ光による強相関系物質の超高速電子相制御の研究」というものです。


【業績】
 近年、光照射により固体の電子構造や物性が高速に変化する現象“光誘起相転移”の研究が活発に行われています。従来の光誘起相転移は、エネルギーが大きい可視光の照射によるものであり、系の温度が上昇するため、電子相変化の機構解明は容易でなく、その高速性も失われるという問題がありました。この温度上昇を抑制して電子相を高速に制御する手法が求められていました。

  本研究では、テラヘルツ光照射による広帯域反射スペクトルや第二高調波の時間変化を高精度で検出する測定系を構築しました。それを用いて、テラヘルツ光の電場により、電子型強誘電体の分極を高速に変調できること、モット絶縁体を電子の量子トンネル過程を介して高速に金属化できることを実証し、さらに、後者の金属化のエネルギー効率が可視光励起に比べ格段に高いことを示しました。
 本研究により、強相関系にテラヘルツ光を照射すれば、温度上昇を抑え、高速性と省エネルギーの両者を満たす新しい量子相転移を実現できることが明らかにされ、この手法による分極や伝導性の高速・高効率制御の研究が進展しました。
 本成果は、レーザー分光技術の発展、非平衡量子物理学や強相関物性の解明等の基礎研究の発展に繋がるとともに、テラヘルツ光や赤外光を使った省エネルギー光デバイスの実現に寄与することが期待されています。 

【主要論文】
「Ultrafast modulation of polarization amplitude by terahertz fields in electronic-type organic ferroelectrics」Nature Communications、vol.4、p2586、2013年発表
「Mott transition by an impulsive dielectric breakdown」Nature Materials、vol.16、p1100-1105、2017年発表





  

2025年4月15日に開催された表彰式

   
 
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